女の情緒の醜きこと。

ことばなど、このわたしの浅ましいことばなど、この口を通ってはただ吐息に変わるだけで、わたしは凡そ幾つかと数えられる程の罪悪に見舞われながら、日々を過ごし続けている。

秋の風が僕の頬を撫で、蝉の声も今では耳を掠めることなくなったが、夏の過ぎ去る今になっても、僕はふとして思うのだ。幾年か前の、夏の卑しい汗と涙に塗れた、あの醜き女の叫び声を。

「情緒よ、わたしを見舞え!あの男の影を捉え、汚せ!」

そうしてその影に自分自身を霞め、悔やむのだ。あの記憶に、あの情緒に、わたしの存在を重ねることなど、大した意味を成さないと言うのに。わたしは残り少ない猶予の中を、彼女等の記憶の中でいきつづける。

わたしの痛ましき情緒は僕とは交わることなく、君とも断じて交わることはなく、ただ夜に漂うのだ。そうして夜に沈み、右頬を意識に絡み捕られるくつうを感じながら、左頬には愛おしい震えを感じる。ただ震え、揺らぎ、痙攣を繰り返していくわたしのこころ。ああ、昨日も今日も、そして明日でさえも、わたしはわたしの情緒に惑い流れていく。幾等かの躊躇いと、幾等かの罪悪と、幾等かの快楽を感じながら、わたしは。

(君を重ねて聴いた、あのおろかな旋律でさえも、わたしのこころはひたすらに揺らぎつづけて!)