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平衡感覚が相変わらずも覚束ない。エリック・サティ
自分が何時から何時までの間外に居て、歩行して、珈琲を飲み、何本煙草を吸って、何を見て、何を考えて生きていたのか。今日の一日の事さえ思い出せずに。そう、視界と思考が霞んでいる。
ただうっすらとした視界の中で世界は過ぎて、果たしてそれは自分が揺れているのか、地が揺らいでいるのか判らなくて、何だろう。頭の中がチリチリする。鈍く、すーっとその感覚だけが過ぎ去っていく。自分の意識だけが途方もなく遠い場所に置いていかれる。
眠い、眠くない。ああ、眠る事は最早逃避でしかないだろう。けれど頭の奥がぼやぼやとして、世界と自分との境界がはっきりしない。なあ、怖いんだよ、なんて呟いてみて、そんな自意識に吐き気がするから、瞬間首ががくんとうなだれて、そのままうずくまる。
いつから私は自分の眼を閉じる事に馴れてしまったのだろう。
酒と煙草と自意識に溺れている。ああ、もう。溺れる、という言葉はなんて日本語滲みているんだろう。嫌だなあ、なんて思いながら何度だってノートに書き連ねるんだ。手と思考が疲労するだけだという事を知っていてもね。